浄土真宗は、親鸞の教えに基づく宗派で、「南無阿弥陀仏」の念仏を中心とします。戒名ではなく「法名」を用い、位牌や卒塔婆を用いない点など、ほかの宗派と大きく異なります。この記事では、浄土真宗の法名、墓石、設置物、参拝の作法をまとめます。

基本情報
念仏と聞法(教えを聞くこと)を大切にし、加持祈祷は行いません。真宗教団連合に加盟する十派と本山は、次のとおりです。
| 派 | 本山 | 所在地 |
|---|---|---|
| 浄土真宗本願寺派 | 本願寺(西本願寺) | 京都市下京区 |
| 真宗大谷派 | 真宗本廟(東本願寺) | 京都市下京区 |
| 真宗高田派 | 専修寺(高田本山) | 三重県津市 |
| 真宗佛光寺派 | 佛光寺 | 京都市下京区 |
| 真宗興正派 | 興正寺 | 京都市下京区 |
| 真宗木辺派 | 錦織寺 | 滋賀県野洲市 |
| 真宗出雲路派 | 毫摂寺(五分市本山) | 福井県越前市 |
| 真宗誠照寺派 | 誠照寺(鯖江本山) | 福井県鯖江市 |
| 真宗三門徒派 | 専照寺(中野本山) | 福井県福井市 |
| 真宗山元派 | 證誠寺(横越本山) | 福井県鯖江市 |
法名の特徴
- 「戒名」とは呼ばず、「法名」と呼びます。本願寺派の公式Q&Aは、「浄土真宗では『戒名』という言い方はしません」と記載しています。
- 法名は、二字の名前に「釋」または「釋尼」を冠します。基本は、男性が「釋○○」、女性が「釋尼○○」です。位号は用いません。道号も用いません(高田派を除く)。
- 法名は、帰敬式(おかみそり)を受けた人に授けられます。仏教徒としての自覚の証しとされています。帰敬式は、三宝に帰依し、真宗門徒として歩み出すことを誓う儀式で、本尊の前で「三帰依文」を唱え、剃刀を頭に3度あてます。実際に髪は剃りません。
- 真宗大谷派では、2025年1月1日から、「釋」と「釋尼」を本人の希望で選べるようになりました。2025年以降の法名は、性別と「釋尼」が一致しないことがあります。
構成の詳細は、戒名・法名・法号の構成をご覧ください。
墓石に記されること
- 「○○家之墓」ではなく、「南無阿弥陀仏」の名号、または『仏説阿弥陀経』の「倶会一処」を刻みます(真宗大谷派の案内)。墓が、仏の教えと呼びかけを聞く場となることを願ってのことです。
- 本願寺派の案内でも、石碑(軸石)の正面に「南無阿弥陀仏」のお名号を刻むことが勧められています。
- 墓石は、故人の霊を祀る「霊標」ではなく、「法名碑」とするよう述べられています。
- 「吉日」の文字は刻みません。
- 「○○家之墓」と刻む例は、浄土真宗の信徒の間では少数派とされています。
墓石の配置・構成の特徴
- 墓に決まった形式はありません。建立前に寺院に相談するよう案内されています。
- 観音像・地蔵像・宝塔は不要とされています。
- 墓の方位、日の吉凶、風水は、仏教と関係のない迷信として、必要ないとされています(真宗大谷派)。墓相に惑わされないよう、本願寺派の案内にもあります。
- 墓の大きさは重要ではなく、経済状況や土地に合わせて選ぶとされています(真宗大谷派)。
- 納骨の時期に決まりはありません。本願寺派の案内では、満中陰(四十九日)か百ヵ日ごろが目安とされています。真宗大谷派は、多くの地域で四十九日の法要の後に納めるとしています。
- 分骨は、禁じる理由がないとされています(本願寺派)。大谷派には、東本願寺(真宗本廟)への収骨や、親鸞の墓所である大谷祖廟(東大谷)への納骨があります。
卒塔婆・位牌など設置物の特徴
- 卒塔婆:浄土真宗系は板塔婆を立てないとされています。先祖供養の教義がないため、五輪塔も用いないとされます。ただし、親鸞の妻・恵信尼の墓や、高野山の親鸞供養塔は五輪塔です。
- 位牌:位牌は用いません。本願寺派の公式Q&Aは、位牌は中国の儒教に由来し、霊が宿るという意識が残るため用いないとしています。かわりに、法名を書いた「法名軸」や、過去帳を用います。過去帳は、法事のときに台にのせて、中脇壇か下段に置きます。高田派は、位牌を用いる例外とされています。
- 線香・焼香:日常の線香は土香炉で、短く折って寝かせて燃やします。法事などの焼香は、フタ付きの金香炉を用います。

参拝の作法・唱える言葉
- 唱える言葉:「南無阿弥陀仏」の念仏です。本願寺派の案内では、合掌するときは必ず声に出して念仏を申すとされ、「黙念」という作法はありません。
- お墓の意味:真宗大谷派の案内では、お墓は、亡くなった方にお願いごとをする場ではありません。「南無阿弥陀仏」を称え、仏の教えを聞く場とされています。本願寺派の案内では、お墓参りは、亡き人の願いとはたらきを聞き、念仏を味わうことと説明されています。
- 念珠:煩悩を滅する道具や回数を数える道具ではなく、阿弥陀仏に合掌礼拝するときの礼儀として用います。床や畳に直接置いたり、投げたりしないように注意されています。
- 焼香:本願寺派では、お香をおしいただかず、回数は一回です。尊前で頭を下げ、香盒の蓋を取ってお香をつまみ、香炉に入れ、蓋をして合掌礼拝し、後退して一礼します。
先祖調査での見方
- 位牌がなく、法名軸と過去帳がある家は、浄土真宗の可能性があります。
- 墓石に、俗名ではなく法名が刻まれている場合は、法名から俗名を調べるために、過去帳や寺院の記録を確認してください。
- 真宗十派のうち、どの派かによって、本山や位牌の扱いが異なります。菩提寺に派を確認してください。
宗派と墓石のほかのページ
- 宗派の一覧と墓石・戒名の見分け方
- 墓石の構成と卒塔婆・五輪塔
- 戒名・法名・法号の構成
- 天台宗の戒名・墓石・作法
- 真言宗の戒名・墓石・作法
- 浄土宗の戒名・墓石・作法
- 臨済宗の戒名・墓石・作法
- 曹洞宗の戒名・墓石・作法
- 日蓮宗の戒名・墓石・作法
- 時宗・融通念仏宗・黄檗宗・南都系の宗派
参考資料
- 浄土真宗(Wikipedia)
- 戒名(Wikipedia)
- 墓(Wikipedia)
- 板塔婆(Wikipedia)
- 五輪塔(Wikipedia)
- 位牌(Wikipedia)
- よくあるご質問(浄土真宗本願寺派)
- 葬儀・法事・お墓のこと(真宗大谷派)
- 法名をいただく(帰敬式)(真宗大谷派)
- 法名の取り扱いの変更について(真宗大谷派)
2026年10月24日に確認した内容です。宗派の中には、寺院・地域・時代によって扱いが異なる事項があります。先祖の墓や位牌について確認するときは、菩提寺または墓地の管理者に問い合わせてください。


