墓石の構成と卒塔婆・五輪塔|和型墓石の各部の名称と刻まれる文字

wagata 先祖調査コラム
写真:Kuroshio no Neko/CC BY 4.0、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載

墓石の形、各部の名称、刻まれる文字、墓塔の種類、卒塔婆の意味をまとめます。先祖調査では、墓石の側面や裏面に刻まれた建立年・建立者・命日が、戸籍や過去帳と突き合わせる手がかりになります。宗派ごとの違いは、宗派の一覧と墓石・戒名の見分け方と各宗派のページに記載しています。

墓石の形

形 特徴
和型 台石2つの上に、細長い竿石(棹石)がのる「三段墓」が基本です。全体が縦に長く、高い形です。
洋型 台石の上に横長の石がのる形で、全体が横に長く、低くなります。ストレート型とオルガン型があります。
デザイン墓 形式にとらわれない現代的な墓です。御影石だけのものから、ガラスや金属を取り入れたものまであります。
和型墓石の例。竿石の正面に「○○家之墓」と刻まれ、その下に台石が重なっています
和型墓石の例。竿石の正面に「○○家之墓」と刻まれ、その下に台石が重なっています(写真:Kuroshio no Neko/CC BY 4.0、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載)

和型墓石の各部と周辺の設備

名称 内容
竿石(棹石) 最上部の細長い石。正面に家名や名号などを刻みます。
上台・中台・芝台 竿石を支える3層の台です。和型は、竿石・上台石・中台石・芝台石の四つで構成されます。
水鉢・花立 水や花を供える部分です。家紋を刻む場所になることがあります。
香炉 線香を立てる設備です。
外柵・境界石 墓所の区画を示し、囲う設備です。
カロート(納骨棺) 遺骨を納める部分です。
墓誌 代々墓で、納骨した人の戒名(法名)を一覧にして刻む石板です。墓石そのものに刻む場合もあります。

墓石に刻まれる文字

場所 刻まれる内容
正面 宗派の梵字や名号、「倶会一処」(浄土真宗)などが刻まれます。明治中期以降は、「○○家(先祖代々)之墓」の形が一般的になりました。
側面・裏面 建之日と建之者(建立した日と人)、故人の命日や俗名が刻まれます。日蓮宗の案内でも、側面か裏面に建立年月日、建立者、法号などを刻むとされています。
戒名(法名) 以前は正面に故人の戒名(法名)を彫っていました。家単位で墓を建てる習慣が広まってからは、この形が変わりました。
家紋 水鉢や花立に刻まれます。
朱字 生前に建てる墓(寿陵)では、戒名や建立者の文字を朱で入れ、埋葬時に朱を落とす方法があります。臨済宗妙心寺派の案内にも、朱墨を使う方法が記載されています。

先祖調査での読み取り方

  • 建立年月日は、その墓を建てた世代を示します。建立者の名前から、当時の当主が分かることがあります。
  • 戒名と命日は、過去帳や戸籍・除籍簿の没年月日と突き合わせて確認します。
  • 墓誌があれば、同じ墓に入った人を一覧できます。戒名だけで俗名がない場合は、過去帳や位牌で俗名を確認します。
  • 文字が風化して読めない場合は、写真を斜光で撮影する、地域の石造物調査の記録を探す、といった方法があります。

墓の形態

  • 代々墓(合祀墓):一つの墓石を建て、納骨した人の戒名(法名)を墓誌や墓石に刻んでいきます。
  • 個人墓:一人だけのための墓です。
  • 比翼塚:夫婦で一つの墓にします。
  • 会社墓・団体墓:会社や団体に貢献した人を祀るために建てます。

浄土真宗の信徒が多い地域や日本海側では、古くは火葬にして、石の墓標を建てない習慣があったと説明されています。沖縄には、亀甲墓や破風墓といった門中墓があります。

墓塔の種類

五輪塔

地・水・火・風・空の五つの要素(五大)を、下から方形、球形、三角形(屋根形)、半月形、宝珠形の石で表した塔です。日本で成立したと考えられています。平安時代後期に造立が始まり、石造のものが一般的になったのは鎌倉時代以降です。

部位(下から) 形 表すもの 梵字(種子)
地輪 方形 地 ア
水輪 球形 水 バ
火輪 三角形(屋根形) 火 ラ
風輪 半月形 風 カ
空輪 宝珠形 空 キャ
室生寺(奈良県)の五輪塔
室生寺(奈良県)の五輪塔(写真:Tawashi2006/CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載)

宗派との関係は次のとおりです。

  • 真言宗:密教の思想に基づくため、墓塔として建てることが一般的です。
  • 天台宗・日蓮宗:上から「妙法蓮華経」の五字を刻むことがあります。
  • 浄土宗:上から「南無阿弥陀仏」を刻むことがあります。
  • 禅宗:下から「地水火風空」の漢字を刻むことがあります。
  • 浄土真宗:先祖供養の教義がないため、五輪塔や卒塔婆は用いないとされます。ただし、恵信尼の墓や高野山の親鸞供養塔は五輪塔です。
  • 時宗:開祖一遍の墓塔は五輪塔です。

宗派を問わず、梵字の種子を刻む例も多く、種子や文字のない五輪塔も多くあります。

宝篋印塔

最上部の相輪、隅飾をもつ笠、四角柱の塔身、二段の基礎で構成される石塔です。日本では鎌倉時代の初めごろから造られました。滅罪や延命の利益があるとされ、追善や逆修のための供養塔、墓碑として、五輪塔とともに多く造られました。装飾性が強いため、主に身分の高い人々の間で用いられました。律宗の叡尊や忍性らの活動とともに、石工による優れた石造美術が各地に残っています。

安養院(鎌倉市)の宝篋印塔
安養院(鎌倉市)の宝篋印塔(写真:Tarourashima/パブリックドメイン、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載)

無縫塔(卵塔)

基礎の上に請花をのせ、その上に卵形の塔身をのせた石塔です。塔身が一つの石でできていて縫い目がないため、この名があります。鎌倉時代に、禅宗とともに宋から伝わった形式で、高僧、特に開山の墓塔に用いられました。現在も、寺院の墓地に卵塔が並んでいれば、ほぼ歴代住持の墓とされます。

円覚寺(鎌倉市)の無縫塔
円覚寺(鎌倉市)の無縫塔(写真:Urashimataro/CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載)

卒塔婆(板塔婆)

卒塔婆は、サンスクリット語の「ストゥーパ」の音写です。もとは、釈迦の遺骨(仏舎利)を納めた塔を指しました。日本では、塔の形を簡略にした白木の板を、墓所のそばに立てて追善供養に用います。

墓の後ろに立てられた板塔婆(香取市)
墓の後ろに立てられた板塔婆(香取市)(写真:katorisi/CC BY 3.0、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載)
項目 内容
形 五輪塔を模した形で、上部が塔状になっています。上から空・風・火・水・地の五大を表します。関西では、小さく薄い「経木」を使うこともあります。
書かれる内容 梵字、名号、種字、戒名、俗名などです。日蓮宗の寺院の案内では、表に「南無妙法蓮華経」と法号(またはお名前)、裏に釈迦の言葉や経文を書くとされています。
立てる時期 納骨時に最初の卒塔婆供養を行い、以後は法要ごとに新しい卒塔婆に替えます。お盆、お彼岸、施餓鬼供養で立てる寺院もあります。
意味 天台宗の案内では、宇宙に行き渡る真理を表すもので、墓参の際に立てて仏の加護を祈るとされています。
古い卒塔婆の扱い 曹洞宗の案内では、古くなったものは合掌してから抜き取り、処分は寺院の指示に従うとされています。
浄土真宗 板塔婆を立てないとされています。

日本では、梢のついた枝や葉を墓前に刺す「梢付塔婆」が古い形で、神式の玉串の原型ともいわれます。12世紀には密教と真言宗の教えが結びつき、五輪塔の形をした卒塔婆を立てる習慣が現れました。1186年(文治2年)に作られた卒塔婆が、伊豆の願成就院に現存します。

位牌・過去帳・法名軸

墓石ではなく仏壇に置く設備ですが、戒名の記載を確認できる資料です。位牌の項には、次のような宗派ごとの違いが記載されています。

  • 禅宗:戒名の上に「空」の字を置きます。仮の位牌には「新帰元」と書き、本位牌で「空」に改めます。
  • 天台宗・真言宗:大日如来を表す梵字「阿」を置きます。
  • 浄土宗:阿弥陀如来を表す梵字「キリーク」を置きます。
  • 浄土真宗:位牌を勧めません(高田派を除く)。法名を紙に書き、掛軸にした「法名軸」を仏壇にかけます。
  • 日蓮宗:戒名(法号)の上に「妙法」を置きます。

過去帳は、位牌を簡略にした帳面です。浄土真宗では法名軸と併用することがあります。位牌が多くなったときは、薄い板に一人ずつの戒名と俗名を記した「繰出位牌」を使う例があります。位牌の様式は寺院や地域によって異なるため、梵字の有無だけで宗派を決めないでください。

法名軸の例
法名軸の例(写真:Triglav/CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons。サイズを変更して掲載)

墓参りの基本的な流れ

天台宗の案内では、お墓参りに特別な作法はなく、ご先祖様への報恩感謝の気持ちを込めてお参りすることが大切とされています。宗派ごとの案内で共通している流れは、次のとおりです。

  1. 菩提寺の墓地であれば、住職に挨拶し、本堂の本尊に参拝します(浄土宗の案内)。
  2. 墓石と墓地を掃除します。水鉢や花立は念入りに清めます(曹洞宗の案内)。
  3. 花、線香、水を供えます。供え物は、花以外は持ち帰ります(浄土宗・日蓮宗の案内)。
  4. 合掌礼拝し、宗派に応じた言葉を唱えます(各宗派のページを参照)。

墓の方位や墓相について

天台宗と真宗大谷派の案内は、どちらも、墓の方位や墓相の良し悪しを気にする必要はないとしています。天台宗の案内では、墓はもともと仏塔として建てられたもので、東西南北、上下のいずれの方位も関係なく、荒れた墓は供養にならないとされています。

宗派と墓石のほかのページ

参考資料

2026年10月24日に確認した内容です。宗派の中には、寺院・地域・時代によって扱いが異なる事項があります。先祖の墓や位牌について確認するときは、菩提寺または墓地の管理者に問い合わせてください。